2018年11月28日水曜日

MuseScoreの連符の傾きについて

 MuseScoreで三連符とかの連符を入力すると、おおよそ音型に沿って連符の括弧が傾きます。しかし、連符の括弧が傾いて欲しくない場面でも傾いていることがあります。

 例えば左図の赤丸部分は、デフォルトでは若干傾いてしまいます。ここの括弧は五線と平行に配置されるべきです。括弧をダブルクリックして手動で平行にするのは不可能ではありませんが、正確に平行にするのは非常に難しいです。少なくとも矢印キー等のキーボード操作だけで平行にするのは不可能です。

 MuseScoreでマウス操作は、基本的に避けた方が良いです。

 私は、連符の水平にすべき括弧を一つ一つ五線と平行に弄るよりも、連符の傾けるべき括弧を一つ一つ傾ける方が楽だと考えます。なぜなら、水平にする作業よりも、傾ける作業の方が、あまり正確さを気にしなくていいからです。また、水平な状態から傾ける方が、傾き加減を揃えることが可能なので、精密に浄書をする場合に都合が良いです。

 そこで、ここでは全ての連符を水平に設定し、必要なところを個別に弄って傾けます。

 スタイルの編集の「連符」のところの「音符からの垂直距離」にある「最大斜度」の数値を0にすると、連符の括弧を水平にすることが出来ます。符幹からの垂直距離と、符頭からの垂直距離の数値が異なっていると、一部の連符の括弧が水平にならないので、この数値を同じにします。


 連符の傾けるべき括弧は、括弧をダブルクリックして矢印キーを使って手動で傾けるといいでしょう。




 連符の括弧の位置に関する項目がインスペクタにあればいいのですがね……2.3.2現状、右図のように括弧の始点終点の位置や傾きに関する項目が無いのです。



 左図の赤枠のように連桁のインスペクタと同じような項目が連符のインスペクタにも欲しいものです……

2018年11月21日水曜日

MuseScoreの.msczのバックアップについて

 今回は、MuseScoreが落ちてしまった時にやるべきことについてお話したいと思います。

 まず作業中にMuseScoreが落ちてしまって、再び立ち上げた時に、MuseScoreがある程度直前の作業まで復元されます。ここで、正常に復元されている場合と、ファイルが破損して復元できない場合に分かれます。

 正常に復元された場合、まず必ず別名で保存してください。2.3.2現在では改善されているようですが、以前のver.では、落ちて再びMuseScoreを起動した時に、「上書き保存」が効かなくなっていることがありました。これで保存したつもりで保存されなかったことが私にはあります。従って、何かあった時には別名で「名前を付けて保存」することを推奨します。

 ファイルが破損して復元できない場合、バックアップファイルを使います。MuseScoreは自動的に.msczファイルのバックアップファイルが生成されます。これは".mscz,"とカンマが付いたファイルで、隠しファイルとして自動生成されます。PCの設定によって隠しファイルは表示されないこともあるので、隠しファイルを表示する設定にしておきましょう。Windows10の場合はエクスプローラーの表示のタブにある隠しファイルのチェックボックスをオンにすれば表示されます。
 .mscz,ファイルはカンマを取れば、通常の.msczファイルとしてMuseScoreで開くことができます。

2018年11月6日火曜日

浄書雑感1 全音『リスト《2つの伝説》原典版』

 全音楽譜出版社から出ている『リスト 《2つの伝説》原典版』を買ってみたところ、コンピュータ浄書では、かなり手間の掛かったものであると思いました。そこで何ヶ所か抜き出して、この楽譜の浄書に関して感想を述べていこうと思います(あくまで素人の個人的な感想です)。

 まずこの楽譜は、五線幅が6.5mmで浄書されています。一般的にピアノの楽譜は菊倍版では7mmで浄書されますが、コンピュータ浄書は従来の方式よりも小さい五線幅で浄書される傾向があります。個人的には五線は大きい方が良いと思います。しかしコンピュータ浄書の譜面は、かなり細い線でも綺麗に印刷されるので、僅かに小さいぐらいの五線幅であれば、見やすさに支障はないでしょう。


 上図を見てください。音符の間隔が非常に狭いことがわかると思います。コンピュータ浄書でここまで音符を詰めることは、容易ではありません。
 上図の一部を抜粋して見てみましょう。実はこの楽譜、左図の下段のように、加線の長さを一つ一つ弄っているのです。
 本来の加線の長さでは、左図の下段は加線が繋がってしまいます。そこで、隣り合う加線が繋がらないように、加線を切っているのです。
 同じような箇所が楽譜全体に見られます。とんでもない手間の掛かった楽譜と言えます。やはり手間の掛かった浄書を見ると、敬服しますね。



 右図のように、スラーと他の記号が干渉するところを、スラーを最小限の範囲だけ途切れさせるのも、凝っていますよね。



 さて左図は、一曲目の第三小節です。
 私は左図の最初の音符に付く運指記号の位置が気になります。原則として運指記号は補助的な記号で、私は他の記号の位置を優先して空いているところに運指記号を置くべきだと考えています。この画像でもそのようになっていますね。しかし調号と臨時記号の間に運指記号が置かれることで、調号と臨時記号の間の余白が無くなっています。私はこれはあまり見やすいとは思いません。


 まず原則として調号と臨時記号の間は空間を設けます。これは、調号と臨時記号が近いと、左図のように臨時記号が調号と一体化しているように見えてしまうからです。



 見やすさのための空間に、運指記号を配置してしまうと、見にくくなってしまいます。私なら右図のように運指記号を配置します。


  上図の上段の音符の間隔を見ると、広い間隔と狭い間隔が交互になっていることがわかると思います。これは左図のように、上昇音型よりも下降音型の方が間隔を狭めることができるためだと思います。


 また非常に狭いスペーシングの場合、音符幅が等間隔では、前の音符の符幹と近くなり過ぎるのに対し、後ろにスペースが空くことで、却ってアンバランスな印象になります。
 そこで、上昇音型は広く、下降音型は狭くスペーシングすることで、狭い小節幅であっても窮屈にならず書くことができます。
 やはりこの楽譜はもの凄く手が込んでいますね。


 ただ、一つ気になってしまうのが、間隔が広めの上昇音型のところを良くみてみると、実はそのスペーシングが揃っていなかったりします。左図の青線と赤線では、赤線の部分が青よりも広いのですが、青線と赤線は同じ長さであるべきだと思います。
 Finaleで作られた出版譜は、時々スペーシングの不可解な仕様が垣間見えてしまいます。浄書家が手を加えれば加えるほど、直しきれない部分が浄書に出てしまうのです。

 ともあれ、この楽譜の浄書家は世界最高水準の実力を持っていることは間違いがないでしょう。こういった浄書はなかなか出来るものではないです。

浄書雑感6 音友『佐藤慶次郎 ピアノのためのカリグラフィー』

 本記事は、 楽譜組版 Advent Calendar 2023 の22日目の記事です。  音楽之友社から「現代日本の音楽」という楽譜シリーズが出版されています。この楽譜シリーズは日本の現代音楽の楽曲を取り扱っており、"なんかスゴイ"楽譜が沢山あります。そう...