2021年2月1日月曜日

小節末尾のスペースが設定されたMuseScore3.6

 MuseScore3.6において、地味な変更ですが小節末尾にスペースが足されるようになりました。小節末尾に音符間隔以外にスペースを足すこと自体は間違いではないですが、私は、MuseScoreにおいて、これは不要な変更であったと考えます。おそらく、MuseScoreでは、小節末尾にスペースを追加で設けない方が、音符間隔がマシに見える譜例の方が多いのではないでしょうか。結果的にMuseScore3.6では、MuseScore2.3.2と比べると水平スペーシングはより劣ったものになっているとさえ言えます。

楽譜の見た目を左右するのはフォントではない
 MuseScore3.6のアップデートの目玉は、新たな記譜フォントLelandの実装ですが、そもそもそれ以前でも記譜フォントはMuseScore2の時点から変更可能であり、デフォルトフォントの刷新は、楽譜の「読みやすさ」を左右するほどのものではありません。新フォントの実装それ自体は良いことではありますが、それと同時にMuseScoreのスペーシングが貧弱なままでは意味がありません。従来のデフォルトの記譜フォントであるEmmentalerは、確かにそのト音記号のデザインこそ見慣れないものでしたが、MuseScoreの浄書に関する仕様がデタラメで間違っていたことが、Emmentalerの評価を押し下げていたと私は考えます。デフォルトフォントがLelandとなった今、LelandはMuseScoreの顔と言えるでしょう。MuseScore3以降の間違った仕様変更の積み重ねによって、Lelandが下手な浄書の代名詞となってしまわないか、懸念するところです。

「加算されたスペース」が増えたことが要因
 MuseScoreの音符スペーシングは、「素の音符間隔」に関していえば実は無印の時からほとんど変わってはいません。今回のアップデートでは、音符の後にスペースを追加する「符尾」による「加算されたスペース」が無駄に増えていることが、MuseScoreの音符間隔を乱す要因となっています。MuseScoreは「加算されたスペース」はインスペクタの「割振り」の数値を減らせていけば、そのスペースを減らすことができます。「一段一小節法」と併用すれば多くの問題を解決するでしょう。冒頭の譜例は以下のようにスペーシングされるべきです。
 この譜例は「一段一小節法」と「音価分割テクニック」を併用してMuseScore2.3.2で作成しました。これらの手法については過去記事を見てください。

最初の段にインデントを付与する設定
 MuseScore3.6では、楽譜の最初の段にインデントを付与する機能が追加されました。これはスタイルの設定でインデント量を調節できるのですが、私は、この実装は馬鹿げていると思っています。というのは、段にインデントを与えることは、この機能ではなくとも、従来からある「フレーム」を挿入することで実現できるからです。しかもフレームの方が多機能で有用です。

 「フレーム」を用いた場合は、フレームの中にテキストを追加することができます。このような機能が既に以前のバージョンからあるのに、どうして別機能としてインデントを実装したのでしょうか。実装するにしても、最初からフレームが自動で挿入されている程度の実装で良かったはずです。





フレームの高さの調整を制限
 MuseScore3.6は垂直スペーシングの自動化が実装されましたが、同時に垂直フレームの高さをデフォルトでは弄れないように改変されました。MuseScore3.6で垂直フレームの高さを変えるためには、「Enable Auto-Size」をオフにする必要があるのですが、高さを変えるためにわざわざこんな余計な作業をしなければならないのは間違っています。このような個別調整を妨げるような自動化は間違っています。残念ながらMuseScoreのアップデートの度に、個別調整を制限するような改変は度々行われてきました。MuseScoreは多機能な楽譜作成ソフトでしたが、その多機能性は利便性のために犠牲になるのは本末転倒と言えます。今後のアップデートがどのような方向に向かうかにも依りますが、MuseScoreの機能を理解せずに新機能を実装するような馬鹿げたアップデートは勘弁願いたいと切に思います。

浄書雑感6 音友『佐藤慶次郎 ピアノのためのカリグラフィー』

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