2020年4月23日木曜日

一段一小節法と音価分割テクニック

 MuseScoreで一段一小節法を使う時に、音符間隔の個別調整に「割振り」を併用するのは必須ですが、「割振り」は「加算されたスペース」を増減させる機能であって、個別の音符間隔を増減させる機能ではないため、扱いづらい部分があります。
 一段一小節法についてはこちらの記事をまず見てください。

 MuseScore3の場合、「割振り」から「後の間隔」が削除されたことで、非常に複雑な挙動を示し、機能としては後退しているため、ここではMuseScore2を前提とします。

 「加算されたスペース」を与える臨時記号等を含む音符とそうでない音符では、同じだけ音符間隔を増やしたい時に、「割振り」に同じ数値を入れても、臨時記号を含む方の音符間隔が広くなってしまいます。「割振り」は音符間隔を増減させる機能ではなく、「加算されたスペース」を増減させる機能であるため、元から「加算されたスペース」を含む音符とそうではない音符では、同じ音符間隔にするために「割振り」の数値は流用できないのです。

音価分割テクニック
 「割振り」の数値を他の音符間隔に流用したい場合は、全ての音符・休符であるスペーシング単位を、休符で等分割して、「加算されたスペース」の無いスペーシング単位を各音符・休符に作ってしまう手法があります。
 加算されたスペースを与える要素の有無で、音符間隔を等しくするために「割振り」の数値が変わってしまうのであれば、加算されたスペースの無い音価単位で、「割振り」を調節すれば良いのです。
 まず、一段の全ての音符と休符を等分するように未使用の声部で休符を入れます。この時に全ての休符の割振り「前の間隔/後の間隔」は-2.00sp程度にしておきます。図の赤く表示した休符は、前の休符との間に臨時記号がないので、「前の間隔」の数値は同じ数値で音符間隔を等しくすることが出来ます。この図では「前の間隔」を3.00spにしていますが、2箇所の音符間隔が等しいことがわかります。

音符間隔の比率を調節したい時に使う
 MuseScoreで、*長い音符の間隔が狭く感じる時があると思います。図の二分音符の間隔を大きくしたい場合に、このテクニックは有用です。

*MuseScoreの音符間隔はデフォルトでは長い音符のスペースが過度に狭くなりがちな傾向があります。一般的に2倍の長さの音符は2倍の間隔ではなく、それよりも狭い1.4倍程度の間隔に浄書され、その比率をスペーシング比率と呼びます。MuseScoreでは短い音符間ではスペーシング比率が大きくなり、長い音符間ではスペーシング比率が小さくなる傾向があります。そのために、MuseScoreでは長い音符が余計に狭くスペーシングされているように見えます。


関連記事
連載「MuseScoreの音符間隔の仕様と有効な手法1」
非表示の休符を挿入するスペーシングテクニック

浄書雑感6 音友『佐藤慶次郎 ピアノのためのカリグラフィー』

 本記事は、 楽譜組版 Advent Calendar 2023 の22日目の記事です。  音楽之友社から「現代日本の音楽」という楽譜シリーズが出版されています。この楽譜シリーズは日本の現代音楽の楽曲を取り扱っており、"なんかスゴイ"楽譜が沢山あります。そう...