第一回では、全体の音符間隔の決め方についてまとめました。今回は個別の音符間隔を調節する上での、取り得る様々な選択肢についてまとめたいと思います。
小節のスペーシング
・小節線から音符までのスペース
小節線から最初の音符または休符までの間に、一定のスペースが設けられます。小節始めの音符に臨時記号やアルペジオが付いている時に、記号と小節線が衝突しない限りはスペースを広げずにする流儀と、加算されたスペース分をそのまま一定のスペースに加算する流儀があります。
・小節末尾のスペース
小節末尾には追加のスペースを設けることがあります。常に一定のスペースが小節末尾に追加する流儀と、符尾が上向きの場合に小節末尾にスペースを追加する流儀と、記号の衝突が起こらない限りはスペースを追加しない流儀があります。
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図1 「小節始端・末尾のスペース」 |
図に示すと上図(図1)のようになります。①のように小節末尾の音符の符尾が上向きの場合、小節末尾の音符間隔が狭く見えるので、④のように一定のスペースを付与するのは合理的です。②のように小節末尾の音符の符尾が下向きであれば、音符間隔がより狭く見えることはないので、上向きの場合のみ音符間隔を広げるというような、②と④を組み合わせた流儀も考えられます。また水平スペーシングの密度が高いほど、小節始端・末尾に一定のスペースを付与しない①②③の方が適していると思われますが、①の場合は小節幅が狭くなるほど小節末尾の音符間隔が音価分よりも殊更狭く見えるため、水平スペーシングの密度が高い時の方で、④のように一定のスペースを敢えて付与することがあります。このように浄書の流儀は一通りではなく、いくつかのパターンが考えられます。なお私の場合、原則的に①②③の流儀を採用し、④⑤⑥のように一定のスペースを付与することはしないというルールで浄書をしています。
・五線の中か外か
小節末尾に一定のスペースを付与しない場合(図1の①②③)でも、小節末尾の音符間隔が狭い時で符尾が上向きである場合は、符尾と小節線が接近しすぎるため下図(図2)の①→②のようにスペースを付与します。小節末尾が上向き符尾であっても③のように五線の外側にある場合は、③のままスペースを付与せずにするスタイルと、④のようにスペースを付与するスタイルが考えられます。すなわち図2の②,③もしくは、②,④の組み合わせが考えられます。
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図3 「小節始端のスペース」 |
図1の③のように小節始端に最小限のスペースを付与するスタイルでは、臨時記号などのスペースを加算する要因が五線の外側に位置する時に、右図(図3)の②のように小節始端のスペースを臨時記号が小節の左側に飛び越えない程度まで削ることができます。
・浄書例
以上のことを踏まえて、小節始端・末尾に最小限のスペースを付与する図1の①②③のようなスタイルで浄書したものと、小節始端・末尾に一定のスペースを付与する図1の④⑤⑥のスタイルで浄書したものを以下の図4・5で比較しました。どのスタイルを用いるかは、浄書家のスペースに対する考え方の違いで異なってきます。どのパターンを採用しても、浄書としては問題ありません。大事なのは、一つの楽譜の中で、浄書の方針に一貫性を持たせることです。小節始端・末尾に最小限のスペースを付与する方針であれば、楽譜のいかなる部分でもその方針が徹底することで、一貫性を持たせられるでしょう。原則的には、図1の①と④が一つの楽譜の中で混在しているのは良くありません。しかし、段の密度の違いなどに一定の基準を設けて①と④を使い分けることも十分に考えられます。その場合も、①と④の使い分けに一貫性があることが大事です。
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図5 「流儀の比較2」 |
今回は小節の始端・末尾のスペースについて、考えられるパターンをまとめました。次回は臨時記号や加線、付点などの「加算されたスペース」の取り扱いについて、考えられるパターンを考えていきたいと思います。
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