MuseScoreでは、音符間隔を調節するのに使用される機能が2種類あります。「小節幅の伸縮」と「割振り」です。第二回では、MuseScoreの音符間隔を調節する機能が如何なるものかを紹介していきます。
小節幅の伸縮
MuseScoreでは各小節の小節幅をそれぞれ伸縮させることができます。MuseScoreは小節内の音符や記号によって小節幅が自動で伸縮する仕様のため、「小節幅の伸縮」の機能は、MuseScoreのスペーシング調整を代表する機能の一つです。
・小節幅の伸縮の方法
割振り
・割振りの調節方法
間隔を調節したい音符または休符を選択すると、インスペクタに「割振り」の項目が表れます。そこで「前の間隔/後の間隔」の数値を弄ることで割振りを調節できます。
・割振りの挙動
MuseScoreの割振りには2つの異なる挙動が含まれています。「小節全体の幅を伸縮させる挙動」と、「個別の音符の前後間隔を伸縮させる挙動」です。
この異なる2つの挙動は、割振りの一定の数値までは、「小節全体の幅を伸縮させる挙動」が優先的にあらわれ、一定の数値を超えると「個別の音符の前後間隔を伸縮させる挙動」が顕現します。
・割振りの原理
さてこれらの異なる挙動は、私は「素の音符間隔」と「加算されたスペース」という2つの概念を用いて説明します。

MuseScoreは「素の音符間隔」に対して、臨時記号や符尾、音部記号、歌詞、アルペジオ等によって、個別の音符に対しスペースが加算されます。割振りの「前の間隔/後の間隔」は厳密には、この「加算されたスペース」の値を調節する機能です。従って「素の音符間隔」を個別に狭めることはできません。MuseScore2 (*) で、臨時記号を付けた音符と何も記号の付いていない音符で、割振りの「前の間隔」をマイナスにしてみてください。臨時記号を付けた音符では「前の間隔」をマイナスすると、前の音符との間隔が狭まるか小節幅が狭まりますが、何も付いていない音符では「前の間隔」をマイナスにしても何も変化が無いはずです。このように、「割振り」では、「加算されたスペース」が0の箇所を狭めることはできません。
*MuseScore3では、割振りの「前の間隔/後の間隔」があろうことか「前の間隔」に統合されているため、「前の間隔」の挙動がMuseScore2とは異なります。
・割振りの「小節全体の幅を伸縮させる挙動」の仕組み


・割振りの問題点
「割振り」自体は、音符の前後の付随する「加算されたスペース」を調節する機能で、本来は音符の前後間隔を個別に調節できるべきです。しかし、MuseScoreは「加算されたスペース」を小節幅を広げて解消することを優先してしまうために、「割振り」を弄っても小節全体の幅を伸縮させてしまう挙動になってしまいます。
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MuseScore2で、割振り「後の間隔」を伸縮させた時の挙動 |
MuseScoreの音符間隔に対するこれらの機能の限界
第一回では、MuseScoreのデフォルトの音符間隔は、小節内では揃っているのに対し、小節外では揃わなくなることを説明しました。また音符間隔の比率が、小節を構成する音符の種類によって変化するために、小節幅を調節するだけでは音符間隔を揃えられないことを指摘しました。第二回ではMuseScoreの音符間隔の調節に関わる機能を解説しました。
さて、これらの機能で音符間隔を整えるのは些か不毛だとは思いませんか。小節毎に音符間隔の比率が異なるために、小節幅を伸縮させるだけでは音符間隔は揃いません。この場合「小節幅の伸縮」では解決せず、個別の音符間隔に関する機能である「割振り」であっても、音符間隔を個別に伸縮させる挙動が顕現する前に、小節幅全体を伸縮させてしまいます。
第三回では、MuseScoreのある性質を利用して、音符間隔を無調整のまま全て揃える方法を解説します。
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