第八課 MuseScoreでのスペーシングの仕方
第七課ではスペーシングの考え方について書きましたが、第八課ではMuseScoreでの音符の間隔調整の方法を説明したいと思います。Hashiboso流ではスペーシングは「小節幅の伸縮」と音符の「前の間隔/後の間隔」の2つの方法を駆使して行います。
小節幅の伸縮
MuseScoreの譜面上の各小節にはそれぞれ小節幅の値が設定されています。小節のプロパティを開くと「その他」の項目に「小節幅の伸縮」があります。デフォルトでは1.00となっていますが、この数値は相対的なものです。この値を小さくすれば小節幅を狭められ、大きくすれば、広げることができます。またこの値は、譜面上の小節を選択した状態で、「Shift + { or } 」で増減させることができます。
小節幅を伸縮させると、小節内の音符の間隔も伸縮するので、まず小節幅の伸縮で、スペーシングを整えると良いでしょう。
割振り「前の間隔/後の間隔」
音符のインスペクタ上の項目の「割振り」に「前の間隔/後の間隔」があります。これで選択した音符の前後の間隔を広げたり狭めたりすることができます。この「前の間隔/後の間隔」には2種類の挙動があり、ある一定の度合いまでは前述の「小節幅の伸縮」と同じように小節全体の幅を伸縮させる挙動で、一定の度合いを過ぎると、選択した音符の前後の間隔のみを伸縮させる挙動に切り替わります。
「前の間隔/後の間隔」での小節幅の伸縮は、前述の「小節幅の伸縮」機能より細かい次元で小節幅を伸縮させることができます。「Shift + { or } 」での小節幅の伸縮ではそこまで細かい調整はできないのですが、「前の間隔/後の間隔」での小節幅の伸縮によって、精密にスペーシングを揃えることが可能です。
選択した音符の前後間隔を調整する挙動の「前の間隔/後の間隔」では、臨時記号や音部記号、加線または歌詞によって必要以上に設けられたスペースを削ることに役立ちます。スペーシングを調整する時に、最初に全ての音符を選択し、「前の間隔/後の間隔」に-1.00~-2.00程度の大きなマイナスの値を入れておくことで、これらの余分なスペーシングを全てキャンセルすることが出来ます。必要なスペーシングも全て削られますが、後からスペースが必要な箇所を元に戻せば大丈夫です。
また音符の前後間隔を調整する挙動の「前の間隔/後の間隔」は、MuseScoreのスペーシング比率が気に入らないところにも用います。一段の中の音符休符数が多く詰まった譜面では比較的すぐにこの挙動が表れますが、一般的にこの挙動が表れるまでの数値を入れると、小節幅が大幅に変化していると思われるので、「Shift + { or } 」による小節幅の伸縮と併用してスペーシングする必要があります。
非表示の休符を入れる
異なる音価の連符が重なる場合や、MuseScoreのスペーシング比率が気に入らない時に、使用していない声部で非表示の休符を入れることで、スペーシングを調整することが出来ます。
右図のように八分音符と三連符が重なる譜例では、未使用の声部で、一拍あたり2つ入る八分音符と3つ入る三連符に対し、6連符の休符を入れることで幅を揃えることができます。最小音価である三連符に対して1/2音価の六連符をいれているので、八分音符に対して1/2音価の十六分音符を入れています。こうすることで、音価順のスペーシングを維持できます。小節内の音符・休符数が増えることで小節幅が広がりますが、小節内の音符・休符の後ろの間隔を狭めることで十分対応できます。
二音程間のトレモロにおいて、トレモロで接続された2音目のスペーシングを無視したい場合も、非表示の休符を挿入することで可能です。左図の付点二分音符のトレモロは、MuseScoreのデフォルトでは付点四分音符2つとしてスペーシングされ、2拍目は八分音符の間隔になってしまいます。八分音符の非表示の休符を挿入することで、八分音符のスペースを無視することが出来ます。ここで、四分音符に対して1/2の音価の休符を用いているため、他の音価に対し1/2の音価の休符を挿入することを忘れないようにしましょう。左図の4拍目四分音符のトレモロは八分音符2つとしてスペーシングします。四分音符のスペーシングに八分休符2つ分を用いているため、八分音符のスペーシングには十六分休符を用いる必要があります。
コード「水平位置」
音符のインスペクタのコード「水平位置」は、音符の位置を物理的に移動させることができます。一つ一つの音を移動させるため、浄書中の不注意で縦で揃うはずの他パートを調整し忘れることで、縦が揃わなくなることがあり得ます。従ってインスペクタにあるコード「水平位置」による音符の移動は、スペーシングの最終手段として用いるべきです。Hashiboso流では大抵のスペーシングの行程は、前項目までに完了しますが、スペーシングにこの手法を用いるとすれば、符尾の「背合わせ・腹合わせ」のスペーシングの処理が考えられます。
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