2023年10月25日水曜日

音符間隔を狭めることが可能になったMuseScore 4.1

 MuseScore 4.0では、音符の前の間隔を、「加算されたスペース」を超えて狭めることはできませんでしたが、4.1では「加算されたスペース」の有無関係なく前の音符に重なる程度まで狭めることができるようになりました。

音符間隔を狭めることができるようになったMuseScore 4.1

 またMuseScore 4ではスペーシング比率によって音符間隔が一貫して定められるようになり、小節毎に音符間隔がバラバラにならないようになりました。

二分音符、八分音符、三連符に注目
 これらのアップデートにより、MuseScore 4.1では水平スペーシングの調整が現実的な作業工程の範囲内で、完遂することができるようになりました。ようやくMuseScoreは音符間隔を調整するのに必要な機能を備えるようになりました。

ver.4.1であれば、このような譜面の音符間隔を調整するのは容易になっている

 とはいえ、MuseScore 4では繊細な浄書作業を行う能力が以前のバージョンに比べ劣っており、総合的にはMuseScore 2の方が楽譜浄書を行うのに必要な性能を備えています。


まともに記号の選択ができない

 MuseScore 4では記号の選択範囲が大きくまともに選択できない時があります。下図ではスラーを編集しようと慎重に編集点をクリックしても、小節全体が選択されてしまっています。仮にこれがMuseScore 2であれば、スラーの編集点を正常に選択できます。MuseScore 2でも記号が近接している場合は記号の選択が他の記号に吸われることは起こりますが、MuseScore 4では明らかに離れている記号同士でも選択が吸われてしまうので、使い物になりません。

スラーの編集点をクリックすると、小節全体が選択される

矢印キーでの移動量が大きすぎる

 MuseScore 4では、一部の記号の位置や傾き等を調整する時の、矢印キーでの調節量が大きくなっています。線記号のクレッシェンドやスラー・タイ等は、上下左右の移動・伸縮や傾き調整における矢印キーでの変化量が大きすぎるので、微調整が不可能となっています。位置だけならプロパティの数値を直接入力することでより細かく調整できますが、傾きや線の伸縮の数値を直接弄ることは不可能であり細かく調整する手段はMuseScore 4にはありません。

連桁の調整は実質不可能

 この記事でも述べましたが、MuseScore 4で連桁の調整は不可能です。4.0でも4.1.1でも変化はありません。MuseScore 4を使う場合は連桁の傾きを変えようとは思わない方が良いでしょう。他のソフトを使うか、MuseScore 3以下のver.を使う方が良いです。

MuseScore 2を使った方がマシ

 デフォルト出力での浄書品質が増せば増すほど、個別調整は大雑把な調整よりも細かな微調整が多くなります。実際MuseScore 4はMuseScore 2と比べれば、記号の衝突が回避され音符間隔が良くなり、デフォルトの見た目は大きく改善したのでしょう。しかしそこから見た目を更に良くすることはMuseScore 4では困難です。MuseScore 2のような「かつてのMuseScore」はもともとは細かな調整が可能でした。残念です。

 MuseScore 2はデフォルトでの見た目は非常に悪いですが、まず微細な調整が可能です。更に私はMuseScore 2の最大の欠点である音符間隔を、最大限改善し自在に調整する手段を確立しています。私にとっては、理想的な楽譜浄書を実現することができる、十分なツールです。


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