2019年6月14日金曜日

MuseScoreでの歌詞入力の手順

 MuseScoreでの歌詞入力の操作方法は、公式ハンドブックに載っている通りですが、日本語歌詞には全く言及されていません。日本語歌詞の書き方には日本語特有のルールがあるので、ハンドブックを鵜呑みに歌詞を書いてしまうと、不適切な書き方をしてしまうことがあります。そこで今回は、MuseScoreの歌詞入力の手順や注意点を、公式ハンドブックを補いつつ、ここに記しておきます。

日本語歌詞の入力手順
 歌詞を入力するには、歌詞を入れたい音符を選択した状態で「Ctrl + L」で歌詞入力モードになります。歌詞を入れて前後の音符に移りたい時は、「Ctrl + ← or →」で移ることができます。また、単に矢印キーだけでも前後の音に移ることができます。
 次の音符に移るのに、スペースキーを使う方法もありますが、全角入力時では無効なので、日本語歌詞入力の場合は、歌詞を入力したらいちいち半角入力に切り替えないと、スペースキーでは次の音符に移りません。一方で「Ctrl + ← or →」や矢印キー単体の場合は全角入力時でも有効なので、日本語歌詞の入力の時は、こちらを用いるようにしましょう。

 日本語の歌詞は、1つの音符に対し一つの歌詞を書きます。殆どの場合は1音1文字ですが、1つの音符に2文字以上入る場合もあります。原則全ての音符に何かしらの歌詞を入れます。伸ばしている音では一般的には、漢字の後ろであっても長音「ー」を書きます。


 小さい「っ」の歌詞の位置には、右図のようにいくつかパターンがあります。「おっ」という歌詞の後ろに長音を付けてもいいですし、実際の歌い方をより反映して、「もーって」のように「っ」の前に長音を置いてもいいです。 
 小さい「っ」は休符に置かれることもあります。MuseScore2では休符に歌詞を置くことには対応しておらず、休符に歌詞を置くには譜表テキストを休符に配置して歌詞を再現する必要がありました(追記1を見よ)。MuseScore3では、実は休符に歌詞を置くことができるようになりました。MuseScore3では休符を選択して「Ctrl + L」で休符上に歌詞を入れることができます。

 (2019/12/02追記)休符に歌詞を書けないMuseScore2の場合は、使わない声部で音符を置くことで、休符の位置に歌詞を置くことが可能です。休符と同じ拍に置いた他の声部の音符を選択して「Ctrl + L」で歌詞を入れることができます。(追記/)


ヨーロッパ諸言語の歌詞の入力手順
 ヨーロッパの諸言語は、単語と単語の間にスペースを置くという特徴があります。
 単語が複数の音符で分割される時には、一単語であることを示すために、単語の分割部分にハイフンを入れます。MuseScoreでは、歌詞入力時にハイフン“-”を入力すると、歌詞と歌詞の間にハイフンが置かれ、自動で次の音符の歌詞入力に移ります。
 一つの語が複数の音符に跨がって伸ばされる時は、語の後ろにアンダーバーを入れます。歌詞入力時に「Shift + _」で次の音符までアンダーバーを伸ばすことができます。
 日本語の場合はこれらのルールは用いません。文字と文字の間にハイフンを入れることはしないし、文字が複数の音符に跨がって伸ばされる時は原則、長音を用います。

歌詞に半角スペースを入れる方法
 MuseScoreでは歌詞入力時に半角入力でスペースキーを押すと、次の音符の歌詞入力に移ってしまいます。歌詞に半角スペースを入力したい時は、「Ctrl + 半角スペース」で半角スペースを入力することができます。

歌詞にハイフンを入れる方法
 ハイフンも同様に「Ctrl + ハイフン(-)」で、歌詞にハイフンを入力することができます。

歌詞フォントの設定
 MuseScoreでは歌詞を含むあらゆるテキストの設定は、「テキストスタイルの編集」で行います。MuseScore2では、画面上のメニューバーの、「スタイル(S)」の中の「テキスト…」をクリックすると、「テキストスタイルの編集」が開けます。MuseScore3では画面上のメニューバーの「フォーマット(F)」の中の「スタイル…」を開くと、下の方に「テキストスタイル」があります。
 テキストのフォント設定は「MuseScore2浄書Sgeyos流 第三課」に記載されているので、ぜひ参考にしてください。

(2019/12/04追記)
歌詞スラーの入れ方
 MuseScoreでは歌詞スラーを入れることができます。公式ハンドブックの「エリジョン(歌詞)スラー / シナレファ」のところに書かれていますが、テキスト編集時に左下にある「α」アイコンをクリックし、特殊文字パレットを開くと、テキストとして特殊な文字や音楽記号を入れることができます。右図の赤枠の記号が歌詞スラーとして入力できる文字です。この歌詞スラーは、「FreeSerif」以外のフォントでは正しく表示されないので、歌詞スラーは「FreeSerif」を使って入力してください。
 左図は「わ/歌詞スラー/ん」の順序で入力したものです。歌詞スラーはフォントをFreeSerifに変えて入力しないと、形や位置が不適切になってしまいます。FreeSerifで入力したものは、2つの文字の中間に配置されています。(追記/)

6 件のコメント:

  1. コメント失礼します。
    ・一つの音符に複数字の歌詞が入る場合の、歌詞につくスラーに関するルールとその再現方法
    ・2,3番を書くときの複数行にまたがる中括弧の書き方

    についてご教授願えないでしょうか

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    1. コメントありがとうございます。
      後日改めて補足しますが、歌詞につくスラーに関してはMuseScoreハンドブックの「歌詞」の項目にある「エリジョン(歌詞)スラー / シナレファ」のところを読んでください。エリジョンスラーは歌詞のフォントによっては正しく表示されないので、"FreeSerif"にしておくと良いです。日本語歌詞の場合でも、スラーに当たる文字だけでも個別に"FreeSerif"に変えておくと、適切に表示されます。
      ・複数行に跨がる中括弧ですが、もし拙楽譜サンプル「緑の森よ」で書かれているのを見たのであれば、あれはマスターパレットから適当な記号を引っ張ってきただけの代物で、機能としては無いです。

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    2. ご返答ありがとうございます。
      当方でも色々試したのですが、2文字を括る方法として一番それっぽい見た目としてはマスターパレット内の一番大きい歌詞スラーの記号を歌詞の別の段に入力し、ずらして重ね合わせる方法でした。もしもっとうまい方法があれば補足記事を楽しみにしております。

      1音に複数文字の日本語歌詞が付く場合、次の3パターンが考えられると思います
      ①2文字1モーラ(「しゃ」拗音)
      ②2モーラ1母音(「しん」促音「しっ」撥音「しょう」ウ音便「シー」伸ばし棒)(2母音だが「さい」イ音便も含む?)
      ③1音節の英語をカタカナで表記(「ファイブ」「チャンス」あるいは日本語を含む掛け声)

      感覚としては②のみについていればいいと思っているのですが、インスト畑の人間なので手元に歌詞付きの楽譜が少なく研究できていません。その数少ない楽譜を確認しても流儀は
      ・スラーは全部なし
      ・①はなくて②のみ
      ・①②③全部(sibeliusの挙動)
      ・「こう」などが2音にまたがる場合、そこにスラーがつく英語歌詞の書き方に準拠したもの(My Song)
      など様々です。また「こう」に対してスラーがついていなければ音価を均等割り当て、ついていればひとまとまりとして発音すると区別しているという合唱人もいました。
      とどのつまり共通ルールはないのだと思いますが、HashibosoP様の見解を教えていただければ幸いです。

      中括弧についてはhttps://musescore.org/en/node/15927
      の記事を参考に作ってみたのですが、日本語フォントと相性が悪かったのでこちらの作品に用いられているものが知りたいと思った次第です。マスターパレットを頑張って探してみようと思います。ありがとうございます!

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    3. 歌詞スラーについては、MuseScoreに機能としてあるので本記事で若干の補足しましたが、公式ハンドブックもよく読んでください。
      日本語の歌詞スラーのルールですが、私は原則付けない主義なので詳しいことは分かりません。実際に何も付いていない出版譜も全音の楽譜でありました。
      推測に過ぎないのですが、
      旧仮名遣いで「あふ」と書いて「おー」と読んだり、「さう」と書いて「そー」と読むような、表記と読みが一致しない部分では、歌詞スラーがないと歌詞が分かりにくくなってしまうために使われたのかなと思います。それが現代仮名遣いにおいても歌詞スラーの慣例が残っているという説はありそうです。
      ただ、実際に運用されているルールは出版譜でも統一されていないように、出版社や浄書家によって異なるので、確かなことは言えません。音符の数に依らず、「おう」と書いて「おー」と読むような部分に歌詞スラーが付くものが一番多い気がします。歴史的仮名遣いの名残だと言えそうですね。
       さて、以上の事から、1音に2文字歌詞がつく場合で歌詞スラーが付くわけでは無さそうですが、音符間隔が詰まっている時に隣り合う歌詞が極めて近くなる時などは、歌詞スラーがあった方が、どの音に何の歌詞が付いているかがはっきりするので、歌詞スラーを付ける効能はあると思います。
      結論から言うと、
      ・付ける必要はない
      ・「おう、そう、きょう」などといった「おー、そー、きょー」と読むような、表記と読みが一致しない部分に使う
      ・1音に2文字の場合に付けるわけでは無いが、付けるメリットはある
      という感じでしょうか。

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  2. ご返答ありがとうございます。
    公式の歌詞スラーの付け方に関しては把握していましたが、半角の中心を繋ぐ見た目で、全角かなの中央同士を結ぶには些か横幅が足りないために、wide elisionを上から貼りつけることにしたのでした。
    歴史的仮名遣いの名残という説は納得感が大きく大変興味深いです。その理由であれば無理につける必要はなさそうですね。かなりもやもやしていたので大変助かりました。
    長文をお読みいただいた上で丁寧にご回答いただきありがとうございました!

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    1. 見た目を気にするなら、マスターパレットから記号を引っ張ってきたり、適当なところで作ったタイを持ってきたりするしか無さそうですね。ここではMuseScoreが用意している機能について言及しましたが、音符を跨ぐ長い歌詞スラーの場合は特に適当な手段が無いので、音符のスラー・タイでごまかすしか無いと思います。出版譜をよく見ると、浄書ソフトのFinaleで作られたものであっても、歌詞スラーの歌詞に対する位置が微妙に歌詞毎にずれていたりするので、機能として無い場合は大変ですね。

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