2019年8月15日木曜日

非表示の休符を挿入するスペーシングテクニック


※MuseScore2向け記事です。MuseScore3ではこの方法は推奨できません。


 MuseScoreの音符スペーシングに介入する時に、非表示の休符を使わない声部に入れる方法があります。一見これは手軽で効果の高い方法に思えますが、効果が高いだけに既存のスペーシングを崩す方法でもあります。


 右図のように、使っていない声部(例えば声部2)に非表示の休符を入れることで、音符の間隔を変えることが出来ます。

スペーシングの基本
 音符間隔を弄る前に念頭において欲しいのですが、楽譜浄書では音価と実際の楽譜上のスペースは比例しません。すなわち、ある音符に対して2倍の長さの音符は、2倍の間隔を取るわけではなく、それより短い間隔を取るのが一般的です。
 上図のように、音符の長さと比例したスペーシングは、小節幅が広くなってしまい、1段に入る小節数に限界があります。上図の「通常のスペーシング」は、2倍の長さの音符に対し1.5倍程度の間隔を取っています。2倍の長さの音符は2倍のスペースを取らなくても、少し間隔が広いだけでも、2倍の長さの音符だと認識させるのに十分です。

 さて、非表示の休符を入れる方法は、浄書ソフトの考える通常のスペーシングに干渉して、通常ではないスペーシングにする方法です。使い方を間違えると却って変なスペーシングになってしまうので、達成すべき音符間隔が分からなければ、この方法は用いるべきではありません。

間隔を狭める方法、広げる方法
 非表示の休符挿入テクニックは、特定の音符間隔を狭めることと広げることの両方が可能です。

間隔を広げる例
 例えば上図の①は、3拍目の二分音符の間隔が短すぎるように見えます。非表示の休符を入れれば簡単に間隔を広げることができますが、①は①で正しいスペーシングであることを留意してください。②のように休符を入れると、二分音符の間隔を確保することが出来ます。ただし入れる休符の種類には注意してください。この譜例で16分休符を入れると、二分音符の間隔は全て揃いますが、それは「音符の長さに比例したスペーシング」になってしまい、適切なスペーシングではありません。適切な休符を挿入するためには、②のように休符を入れる時は、音符間隔が実質③と同じになることを認識しておくべきです。

間隔を狭める例
 この方法は間隔を狭めたい時にも用いることができます。右図のように、全体に1/2音価の休符を挿入し、間隔を狭めたい箇所のみ等倍の休符を入れることで、相対的にその箇所の間隔を狭めることができます。



 左のような連符を整える時にも、同様にこの方法が使えます。(この場合にローカルレイアウトを使うのは不適切です。詳しくはこちらの記事を見てください。)

 まず休符を入れる前に、デフォルトでの音符間隔がどういう処理になっているかを理解します。デフォルトでは、三連符の間に八分音符が入る箇所が、図のように6連符のようなスペースになっています。そのために、三連符の間隔が一部広がっているように見えるのです。今回は、6連符2つ分の間隔になってしまっている箇所を、3連符本来の間隔に戻すことを目指します。したがって、図の右のようなスペーシングになるべきです。
 MuseScoreでは等分の音価の休符を全体に挿入する限りは、スペーシング比率は変わりません。また今回の譜例では、三連符の間に八分音符が入る箇所が6連符のようなスペースになっているので、元の音価の1/2の休符を入れることで、目標のスペーシングを達成することができます。

 さて、本来の音価より細かい音価の休符を入れると、小節幅が広がります。そこで、挿入した非表示の休符を全て選択し、インスペクタの割振りの「後の間隔」をマイナスにしていくと、もともとの小節幅まで戻すことが可能です。

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