2020年3月1日日曜日

小節を跨ぐ連符の書き方

 MuseScoreの連符は小節を跨ぐことは通常できません。しかし、発想を変えたり既存の機能をいくつか組み合わせることで、小節を跨ぐ連符を書くことができます。

一段一小節法を使う
 最もスマートな方法は、一段一小節法を用いることです。一段一小節法とは、MuseScoreの1段を任意の小節数分の拍数に設定した単一の小節で構成し、その単一の小節を小節線で任意の小節数に分割する方法です。この方法は連載「MuseScoreの音符間隔の仕様と有効な手法で説明しています。概要だけ知っても容易には使いこなせない方法なので、連載記事を全て読んでから一段一小節法を使ってください。

 まず1段に1小節だけ入れるように「譜表の折り返し」を置きます。



 次に小節のプロパティを開き、「小節の長さ」をその段に入れたい小節数分の拍数に変えます。



 音符を入力します。




 小節線を入れたいところの拍に挿入します。小節線を挿入する拍に音符・休符がない時は、未使用の声部で非表示の休符を入れ、その休符に対して小節線を入れることで挿入することが可能です。



 表記上は複数の小節を入れても、実際には1段には1小節しか入っていないため、小節番号はズレます。従って次の段初の小節のプロパティを開き、「小節番号の増減」で小節番号を調節する必要があります。


 このようにして、小節を跨ぐ連符をMuseScoreで表記することが可能ですが、一段一小節法はMuseScoreの小節の機能を敢えて回避する手法のため、小節に依存する機能は全て正しく機能しません。小節番号を手動で調節しなければならなかったり、本来表記されるはずの臨時記号が同一小節判定のために抜けたりします。従って一段一小節法を使う場合は、必ず連載「MuseScoreの音符間隔の仕様と有効な手法を全て読んだ上で使ってください。



一段一小節法を使わない場合
 一段一小節法を使わなくても、複数の機能を組み合わせてゴリ押しすれば右図のように小節を跨ぐ連符を表記することが可能です。



 まずこのように小節を跨がない書き方で音符を入力します。




 小節を跨ぐところの連桁を繋げるために、パレットから「連桁のプロパティ」の「連桁(中間)」を音符に挿入します。

 連桁を選択した状態でインスペクタの連桁の項目にある「右旗/左旗の位置」の数値を0にします。この項目は、本来は連桁の間隔を調節するための機能です。


 不要な部分を非表示にします。各々の記号はインスペクタの「要素」の項目にある「表示」のチェックボックスをオフにすることで非表示にできます。



 連符の数字や括弧の位置を調節すると完成です。 




 上図のように、連桁の桁の本数が途中で変わる場合は、インスペクタで「右旗/左旗の位置」を0にしてしまうと、強制的に連桁の桁が1つになってしまいます。この場合は他の声部を使って、連桁の桁を補います。

 上図のように、足りない連桁は別の声部で補って、元の声部の連桁と重ねることで再現できます。今回の譜例では声部2の「右旗/左旗の位置」も0にしましたが、補うべき連桁が複数の時は0にしない方が楽でしょう。

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