この3つの手順を組み合わせることで、あらゆる音符間隔を調節することがMuseScoreで可能となります。MuseScore2に実現不可能な音符スペーシングはありません。
①一段一小節法で入力する
さて、MuseScoreで普通に入力すると、デフォルトの出力結果はこのような感じになります。
これでは使い物にならないので、取り敢えず一段一小節法を使います。一段一小節法は、MuseScoreで音符間隔をどうにかするためには必須テクニックですので、連載「MuseScoreの音符間隔の仕様と有効な手法」を読んでおいてください。
一段一小節法を使った場合のデフォルトの音符間隔はこんな感じです。

全ての音符の「割振り」の値を前後共に-3.00spにするとこのようになります。
一見これでも音符間隔が揃っていないように見えますが、符頭の間隔は上図の赤線で示したように全く均等に揃っています。音符の符尾は符頭に対して上向きにつくか下向きにつくかによって、符頭に付く位置が左右異なります。このため、符頭の間隔が均等であっても、符尾の間隔は不均等になってしまうので、パッと譜面を見た時に音符間隔が揃っていない印象を与えてしまいます。ここで、符尾を基準に間隔を揃えることで、見た目の印象が全く変わってきます。
このまま各音符の「割振り」を調節することで、音符間隔を整えることも可能ですが、臨時記号が含まれる音符があり、「割振り」は「加算されたスペース」を調節する機能なので、そのまま「割振り」で調節するととても面倒くさいです。
そこで、更に音価分割テクニックを使います。音価分割テクニックでは、未使用の声部で全ての音符を等分するように休符を挿入していきます。こうすることによって、一つの音符に対し、必ず「加算されたスペース」を含まない休符が入るので、「加算されたスペース」を含まない休符の「割振り」で音符間隔を調整することで、臨時記号の「割振り」への影響無しに、「割振り」で音符間隔を調整することができます。全て分割したら、分割に使った声部の休符を全選択して、「割振り」の数値を前後共に-3.00spにしておきます。
MuseScore2では「割振り」の数値を減らしていけば、どんなに音価を分割していっても一段に全て入れることが可能ですが、MuseScore3では「割振り」の仕様改悪で、狭められる音符間隔に限界があるので、音価分割テクニックを使うとまともに1段に小節が入らなくなります。MuseScore3で音符間隔を調整するのは非現実的なので諦めてください。開発陣を恨め
MuseScoreの「割振り」は加算されたスペースが無い音符間隔を狭めることはできないので、音符間隔を狭めたいところは、挿入した休符の分割を無しにすることで、相対的に音符間隔を狭めます。逆にデフォルトの音符間隔より広げたいところは、多めに分割することが有効です。
記号が重なっているところは「割振り」の数値を0に戻します。それでもスペースが不十分であれば「割振り」の数値を増やし、スペースが余分であれば数値を減らすと良いでしょう。
③「割振り」で微調整する
音符間隔は原則「割振り」で調節しますが、「割振り」は加算されたスペースの調整機能なので、臨時記号が含まれる音符とそうでない音符の間隔を等しくする時に、同じ数値を使っても臨時記号が含まれる音符の方が広くなってしまいます。そこで、音価分割テクニックで分割した2番目の休符の「割振り」を使います。
分割2番目の休符をまとめて選択して、「割振り」の「前の間隔」を増やして調整していくと右の.gifのように動きます。
音符間隔を広げるべきところの「割振り」の前の間隔をそれぞれ増やすとこのようになりました。
このようにして、一段一小節法と音価分割テクニックを併用することで、MuseScore2はあらゆる音符間隔を比較的合理的な手順で調整することが可能です。但しMuseScore3では音価分割テクニックを使って特定の音符間隔を狭めることには全く向かなくなっているので、音符間隔を調整することは非常に苦手になっています。楽譜浄書でMuseScore3は使うべきではありません。MuseScore2を使うべきです。
余談



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・連載「MuseScoreの音符間隔の仕様と有効な手法」
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・非表示の休符を挿入するスペーシングテクニック
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・同拍に異なる連符同士のスペーシング