2019年3月16日土曜日

段を跨ぐ時のオッターヴァとcresc.

 8va- - -が段を跨ぐ時に、(8va)- - -とする楽譜と括弧を付けずに8va- - -とする楽譜があります。これは浄書家の好みでどちらでも構わないのですが、私はオッターヴァには括弧を原則付けません。段を跨いだ先でも8va- - -のように書きます。

 今回は私が何故括弧を付けないのかを説明したいと思います。

 その前に、cresc.- - -の場合は私はこのように考えます。cresc.は始点と終点が明確に区別される必要がある記号です。右図のように、cresc.- - -を音符一つずつにcresc.と書き換えると、異なった意味合いになります。


 cresc.- - -が段を跨ぐ場合は、cresc.であることを跨いだ先の段で示す場合は、必ず括弧を用いるべきだと思います。括弧を用いずにcresc.- - -とした時に、跨いだ先の1拍目がcresc.の始点だと誤認されるかもしれません。cresc.のどこから始まってどこまで続くかは、演奏に影響する情報です。これは正確に記譜されなくてはなりません。

 しかしオッターヴァの場合、端にその範囲の音をオクターブ上(下)に移す意味しかありません。cresc.と異なり右図のように個々の音符にオッターヴァを書いても、点線で範囲を示しても、同じ意味になります。演奏上もこの両者は差異がありません。


従ってオッターヴァが段を跨ぐ場合に、跨いだ段の先を(8va)- - -とする必要は私は無いと考えています。仮に跨いだ先の1拍目をオッターヴァの始点だと見間違えたとしても、演奏上に何の違いもありません。



 書く必要のないところに括弧を書いた時に、本来の意図でない意味合いを付け加えてしまうかもしれません。実際のところ、段を跨ぐオッターヴァに括弧を付けても、「可能ならばオクターブ上で演奏する」という意味で捉える人はいないと思いますし、括弧を付けるか付けないかは好みで決めて構わないと思います。しかし私はこのような理由により段を跨ぐオッターヴァは括弧を付けません。

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