2021年6月27日日曜日

水平スペーシングの考え方の全て 第二回

 第一回では、全体の音符間隔の決め方についてまとめました。今回は個別の音符間隔を調節する上での、取り得る様々な選択肢についてまとめたいと思います。

小節のスペーシング

・小節線から音符までのスペース

 小節線から最初の音符または休符までの間に、一定のスペースが設けられます。小節始めの音符に臨時記号やアルペジオが付いている時に、記号と小節線が衝突しない限りはスペースを広げずにする流儀と、加算されたスペース分をそのまま一定のスペースに加算する流儀があります。

・小節末尾のスペース

 小節末尾には追加のスペースを設けることがあります。常に一定のスペースが小節末尾に追加する流儀と、符尾が上向きの場合に小節末尾にスペースを追加する流儀と、記号の衝突が起こらない限りはスペースを追加しない流儀があります。
図1 「小節始端・末尾のスペース」
 図に示すと上図(図1)のようになります。①のように小節末尾の音符の符尾が上向きの場合、小節末尾の音符間隔が狭く見えるので、④のように一定のスペースを付与するのは合理的です。②のように小節末尾の音符の符尾が下向きであれば、音符間隔がより狭く見えることはないので、上向きの場合のみ音符間隔を広げるというような、②と④を組み合わせた流儀も考えられます。また水平スペーシングの密度が高いほど、小節始端・末尾に一定のスペースを付与しない①②③の方が適していると思われますが、①の場合は小節幅が狭くなるほど小節末尾の音符間隔が音価分よりも殊更狭く見えるため、水平スペーシングの密度が高い時の方で、④のように一定のスペースを敢えて付与することがあります。このように浄書の流儀は一通りではなく、いくつかのパターンが考えられます。なお私の場合、原則的に①②③の流儀を採用し、④⑤⑥のように一定のスペースを付与することはしないというルールで浄書をしています。

・五線の中か外か

 小節末尾に一定のスペースを付与しない場合(図1の①②③)でも、小節末尾の音符間隔が狭い時で符尾が上向きである場合は、符尾と小節線が接近しすぎるため下図(図2)の①→②のようにスペースを付与します。小節末尾が上向き符尾であっても③のように五線の外側にある場合は、③のままスペースを付与せずにするスタイルと、④のようにスペースを付与するスタイルが考えられます。すなわち図2の②,③もしくは、②,④の組み合わせが考えられます。
図2 「上向き符尾と小節末尾のスペース」
図3 「小節始端のスペース」
 図1の③のように小節始端に最小限のスペースを付与するスタイルでは、臨時記号などのスペースを加算する要因が五線の外側に位置する時に、右図(図3)の②のように小節始端のスペースを臨時記号が小節の左側に飛び越えない程度まで削ることができます。

・浄書例

 以上のことを踏まえて、小節始端・末尾に最小限のスペースを付与する図1の①②③のようなスタイルで浄書したものと、小節始端・末尾に一定のスペースを付与する図1の④⑤⑥のスタイルで浄書したものを以下の図4・5で比較しました。どのスタイルを用いるかは、浄書家のスペースに対する考え方の違いで異なってきます。どのパターンを採用しても、浄書としては問題ありません。大事なのは、一つの楽譜の中で、浄書の方針に一貫性を持たせることです。小節始端・末尾に最小限のスペースを付与する方針であれば、楽譜のいかなる部分でもその方針が徹底することで、一貫性を持たせられるでしょう。原則的には、図1の①と④が一つの楽譜の中で混在しているのは良くありません。しかし、段の密度の違いなどに一定の基準を設けて①と④を使い分けることも十分に考えられます。その場合も、①と④の使い分けに一貫性があることが大事です。
図4 「流儀の比較1」
図5 「流儀の比較2」

 今回は小節の始端・末尾のスペースについて、考えられるパターンをまとめました。次回は臨時記号や加線、付点などの「加算されたスペース」の取り扱いについて、考えられるパターンを考えていきたいと思います。

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2021年6月19日土曜日

水平スペーシングの考え方の全て 第一回

 楽譜浄書における、音符間隔の決めるための考え方について、まとめたいと思います。大きく分けて全体の音符間隔と、個別の音符間隔に分けられ、後者は特に、加算されたスペースの取り扱いの違いによって、様々な方法があります。今回は「全体の音符間隔の決め方」についてまとめます。

全体の音符間隔の決め方

 音符間隔は一般的に音符の長さに対応してその間隔が決められます。音符の長さと間隔との対応の仕方には以下の考え方があります。

・対数的スペーシング

 コンピュータ浄書において、原則的に用いられるのが対数的スペーシングです。これはスペーシング比率に基づいて、それぞれの長さの音符間隔が定められます。スペーシング比率は、ある音符と2倍の長さの音符との間において、楽譜上のスペースが何倍であるかを示します。楽譜浄書では四分音符が八分音符の2倍の間隔であることはあまりなく、1.5倍前後の間隔比が一般的です。このときのスペーシング比率は1.5となります。
 対数スペーシングにおける音符間隔とスペーシング比率の関係は以下の式で表すことができます。

\begin{align} M=R^{\log _{2}N} \end{align}

R:スペーシング比率
 N=2の時、R=M
 1 ≦ R ≦ 2
N:音価倍数(倍)
 2つの音符をA, Bとしその音価の値をa, bとしa>bとしたとき、
 N=a/b, a≠0, b≠0, a≠b
M:実際のスペース(倍)
 楽譜上のスペースは、音符Aは音符BのM倍のスペースを取る

 (1)の式をグラフで表すと下図のようになります。1 ≦ R ≦ 2の範囲で変動し(赤線)、R=1の時はM=1(緑線)なので全ての音符間隔が音価の違い関係無しに等しくなり、R=2の時はM=N(青線)なので音価の大きさと実際のスペースの長さは比例します。
 スペーシング比率は1 ≦ R ≦ 2の範囲で変動しますが、2(青線)に近づけば近づくほど音価の違いが実際のスペースに反映されるようになり、1(緑線)に近づけば近づくほどスペース効率が良くなります。最適なスペーシング比率は様々な条件によって変わりますが、段の密度が高い時は1に近い方が見やすくなり、段の密度が低い時は2に近い方が見やすくなるでしょう。


・比例的スペーシング

比例的スペーシングは不自然なので、全体の音符間隔に対して用いることは少ない
 比例的スペーシングは、音符の長さと音符間隔の関係性が比例的に定められるスペーシングです。すなわち二分音符であれば四分音符の2倍の間隔が与えられます。これはスペーシング比率が2の時の対数的スペーシングと等しく、M=Nと表すことができます。一般的には上図のように、大した音符量でなくとも細かい音符の間隔が狭くなりすぎることからスペース効率が悪いため、比例的スペーシングが楽譜全体に用いられることはほぼありません。しかし部分的に比例的スペーシングを適用することは考えられます。
 上図左のように十六分音符で八分音符の間隔が広がるのは一般的ですが、上図右のように八分音符以下に比例的スペーシングを適用することで、八分音符の間隔を揃えることができます。Hashiboso流ではスペース効率の悪い比例的スペーシングを使うことはないですが、部分的に用いるのであれば使うメリットはあります。

・小節幅を等幅とする場合

 対数的スペーシングでは、十六分音符x16の小節と四分音符x4の小節とでは、十六分音符x16の小節の方が広い幅になります。すなわち一般的には密度の濃い小節の方が小節幅が広くなるのです。小節幅を等幅にしてスペーシングするのは、一般的ではありません。しかしながら、例えばポップスのコード譜で4小節毎に段割を固定し、かつ譜面の音形よりもコード記号が優先されるべき場合であれば、コード記号を各段で縦を揃えることが重要視されることもあり得るでしょう。そのような考え方に基づいた最善の浄書が、小節幅を等幅にすることであるのも考えられます。
 小節幅を等幅とする場合、比例的スペーシングであれば基本的に小節幅は等幅になります。しかし、比例的スペーシングを全体に適用すると、十六分音符などの短い音符が多く使われる譜例などでは、五線幅を相当小さくしなければ一段に4小節を入れることは不可能です。五線幅を小さくすることは、音符の小さくなるので、視認性は悪くなります。すなわち比例的スペーシングでは浄書が難しいのです。対数的スペーシングも小節幅を等幅にはできません。これらのことから、一段の中で同じ長さの音符が同じ音符間隔にすることは現実的ではないため、段単位で音符間隔を揃えることを放棄して、小節単位でスペーシングすることがおそらく最善でしょう。
 上図は小節幅を等幅として小節単位でスペーシングしたものと、対数的スペーシング及び比例的スペーシングを比較したものです。第1小節~第2小節の八分音符や、第5小節~第6小節のスラッシュの間隔など、小節が異なれば音符間隔が異なってしまっていますが、比例的スペーシングのように極端に音符間隔が狭まることもなく、小節幅を等幅とするならば比例的スペーシングよりは現実的でしょう。ただ小節幅を等幅とし小節内でのみ対数スペーシングを適用した場合、小節内の拍の位置は等間隔にはおかれないため、コード記号の位置は結局揃うわけではありません。上図でも3拍目におかれるコード記号の位置を見れば、揃っているわけではないことが分かります。
 上図は、コード記号の位置を合わせるために、最初の小節のみ比例的スペーシングに変更したものです。音符よりもコード記号が優先される譜例であれば、小節幅を等幅とするスペーシングが考えられると先に述べました。しかし、コード記号を揃えることを実現するために、音符間隔を崩してまでコード記号を揃える必要があるかは、私は疑問に思うところです。コード譜ではコード記号が重要だとしても、そこに音符が記述されていれば、その音符が演奏されることが期待されているので、音符の可読性の重要度の方が優位に立つのではないでしょうか。そういった場面においても小節幅を等幅にすべきだとは私は思いません。ただ、小節幅を等幅にすることが音符間隔を崩してまで望まれる場面においては、小節幅を等幅に固定し小節内においてのみ対数的スペーシングを適用することが、音符の可読性を損なわずに実現する解決策だと思われます。

・まとめ

 全体の音符間隔を決める時に、もっとも基本的な考え方は対数的スペーシングです。密度の高い段ではスペーシング比率を低くする方が良く、密度の低い段ではスペーシング比率を高くする方が良い場合が多いです。
 音価の長さと楽譜上の音符間隔が比例関係にあるのが、比例的スペーシングです。通常は比例的スペーシングを楽譜全体に適用することはありません。楽譜の一部分に適用するのが有効である場合があります。
 最も普遍的な対数的スペーシングでは、小節幅が等しくなることはほとんどありません。小節幅を等しくする方が良い場面は非常に限られています。小節幅を等幅とする場合、小節内では対数的スペーシングを適用するのが良いでしょう。

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2021年6月3日木曜日

他のMuseScoreユーザーより見た目で楽譜に差を付けろ

まずは記譜
 楽譜の見た目を左右するのは、記譜と浄書です。「記譜」とは楽譜の書き方のことで、文章における文体そのものを指します。文体が滅茶苦茶だと、どんな文字サイズでも行間隔でも、そもそも読みにくいことでしょう。しっかりした文章を書くのと同じで、楽譜も読みやすい書き方があります。一例として下図にてリズムの書き方での作法を紹介します。このように拍が伝わらない書き方は、リズムのタイミングが分からなくなります。リズムの書き方には一定のパターンがあり、実際にはそれらを組み合わせて楽譜は書かれます。
※個人的な見解です。例えばここで批判的に取り上げた上図4段目の「八分音符2つ+四分音符」は実際には使われている表記です。
 このブログでは「浄書」をテーマにしているため、「記譜」についてはほとんど触れません。ここで挙げた例は一例ですが、出版譜を見てプロの譜面の書き方を勉強することを勧めます。

公式のハンドブックを見よ
 MuseScoreを使う上で、必ず公式のハンドブックは見ておきましょう。MuseScoreのほとんどの機能はそこで解説されています。本ブログでは、公式のハンドブックに書かれていることは知っている前提として扱います。したがってMuseScoreの機能そのものの使い方に関しては本ブログでは扱いません。


 MuseScoreを使う上での、多くの疑問や勘違いは、ハンドブックを読みこめば解消されるはずです。必ずチェックしておきましょう。例えばハンドブックの「繰り返しとジャンプ」の項目を見れば、D.S.を使った時にCodaに飛ばないといった勘違いは解消されます。デフォルトではCodaに飛ぶ記号として"D.S. al Coda"が用意されており、単なるD.S.を用いる場合でもインスペクタでジャンプの設定を適切に書き換えればCodaに飛ばすことができます。本ブログでは操作方法だけの記事は書きませんので、ハンドブックは読み込んでおきましょう。

無闇に記号の位置を動かさない
 MuseScoreで、強弱記号やテンポ記号などをマウスでドラッグして移動させるのは基本的にやってはいけません。なぜならマウス操作で動かした記号の位置を揃えることは、マウス操作では難しいからです。記号を移動させる場合はキーボードでのショートカットキーを使うか、インスペクタで数値を入力して定量的に動かすべきです。記号を選択して"Ctrl + ← or →"で1.00spずつ移動することができます。またインスペクタの水平位置・垂直位置を入力する状態で、"↑ or ↓"で0.5spずつ数値を増減させることができます。

Shift操作でアンカーの位置を変える
 譜表テキストや強弱記号、線記号などの記号は、どの音符や拍に所属するかが決められています。拍に対して設置できる記号は、拍に対してアンカーが打たれます。線記号であれば、アンカーの位置を変えるには記号を選択して"Shift + ← or →"で変えることができます。記号の位置を変える前に、その記号の所属する拍や音符が正しいかをチェックしましょう。

 また、しばしばテンポ記号の位置を変えている譜面を見かけますが、テンポ記号は基本的に「拍子記号」に位置を合わせるのは正しい位置であり、MuseScoreのデフォルトで正しい位置に置かれるので、テンポ記号の水平位置は無闇に変えるべきではありません。

以下の記事も参考にすると良いでしょう。

フォントを変えてみる
 音楽記号フォント(記譜フォント)や文字のフォントを変えると、楽譜の印象が変化します。楽譜の見やすさ自体はフォントの違いでは大きくは変わりませんが、楽譜をこだわって作っていることが伝わりやすいでしょう。MuseScore 3.5.2までのデフォルトの記譜フォントはEmmentalerで、MuseScoreの微妙な浄書の代名詞的となっていました。MuseScore 3.6では、デフォルトではLelandという記譜フォントに変更されており、実際デザイン自体は洗練されていますが、他の記譜フォントに変えてみるのも良いでしょう。MuseScoreで使うことができるBravuraは、有償の浄書ソフトであるDoricoのデフォルトの記譜フォントでもあり、十分実用性のあるデザインとなっています。
 MuseScoreの記譜フォントを変更するには、「スタイルの編集」を開きますが、MuseScore 3を使用する場合、記譜フォントを変更する時に必ず「自動でフォントに基づいたスタイル設定を読み込む」を無効にしておきましょう。この機能がオンになっていると、自分で変更したところを含む諸設定がフォントに基づいた設定に勝手に書き換わってしまいます。スタイルの設定を自分で書き換えている人が後から記譜フォントを変更すると、書き換えた内容が全て上書きされてしまい、悲しい思いをするでしょう。無い方が良い機能です。

全体の設定を見直す
 MuseScoreのデフォルトのスタイルの設定には、残念ながらところどころおかしい点があります。スタイルの設定を見直す際に、楽譜の五線や小節線の太さ等の設定も変えてみると、楽譜の印象が変わります。

 スタイルの設定を弄る時に、拙ブログの「MuseScore2浄書Hashiboso流」は参考になるかと思います。

 また五線サイズが紙のサイズに対して大きすぎたり、小さすぎたりすると、1枚の紙入る小節数が少なくなりすぎたり、紙のスペースが余りすぎたりします。五線サイズを適正に設定しましょう。この設定は、用紙サイズを変える「ページの設定」の中の「譜表のスペース」の数値を変えることで、五線サイズを変更することができます。詳しくは「MuseScore2浄書Hashiboso流 第一課」を見てください。

段割を自分で決める
区切りの良いところでページを変えているヘンレ原典版「浄書雑感3 ヘンレ原典版『ブラームス:8つの小品 Op.76』
 楽譜浄書で一番最初にすべき作業は、「段割」です。1ページに何小節まで入れるか、どこの小節でページを変えるかを自分で決めることは、楽譜のレイアウトを決める第一歩となります。本ブログの浄書雑感で取り上げたヘンレ原典版では、上図のようにページ末尾の小節をなるべく区切りの良い小節か、休符のある小節にする努力がなされています。このような段割をすることで、奏者が自ら譜めくりをすることが可能になります。
 MuseScoreでは「区切りとスペーサー」のパレットにある「譜表の折り返し」や「ページ区切り」等の「区切り」を用いることで、このような段割の作業をすることができます。MuseScoreのデフォルトより、一段に多くの小節を入れたい場合は、本ブログの「区切りとスペーサー」という記事を参考にしてください。

スペーシングが全て
 段割を決めてしまえば、あとはその限られたスペースをどのようにして最も見やすく活用していくかが残りの課題です。演奏者が楽譜を読む時に一度に見なければならない範囲を最小にし、少ない視線移動で楽譜の内容を把握できるようにするためには、音符間隔の決め方や記号の配置の仕方などの細やかな調整を積み重ねていきます。このような音符間隔の調整や記号と記号との距離を決めることを、スペーシングと言います。
MuseScoreは音符のスペーシングの仕様が著しく不適切なため、揃うべき音符間隔が容易に揃っていない場面は多いです。またそれを完璧に修正するのは、MuseScoreの仕様では多大な苦労を必要とします。しかしながら、全く無調整で済ますよりは、多少でも調整した方が良いでしょう。
八分音符に注目すると、小節毎に音符間隔が異なることが分かる

 MuseScoreの音符間隔を調整する第一歩に使える機能として「小節幅の伸縮」があります。伸縮させたい小節を選択して"Shift + [ or ]"とすることで、小節幅を伸縮させることができます。しかしMuseScore 3では「小節幅の伸縮」は0.8以下では全く変化しなくなっていて、小節幅を伸縮することができる程度が少なくなってしまっています。MuseScore 2.3.2では小節幅は0~10の範囲で数値通りしっかり伸縮するので、MuseScore 3では機能が後退しています。
小節幅の伸縮:"Shift + [ or ]"

 MuseScoreの音符間隔を調節する機能として「割振り」がありますが、この機能は複雑な挙動を示すのでここでは説明を割愛します。過去記事にて「割振り」の挙動を解説しているので、詳しく知りたい場合はそれらを参考にしてください。


 ただしこれらの「小節幅の伸縮」機能や「割振り」は、MuseScoreの音符間隔の問題を根本的には何も解決しないので、音符間隔を完璧に調整したい場合は、「一段一小節法」という特殊な手法を用います。これはMuseScoreの仕様を無視するような邪道な手法であり、MuseScoreの機能の一部は働かなくなるデメリットもあります。この手法自体がある程度手間がかかり実際大変ですが、既存の機能で音符間隔を完璧に調整するより圧倒的に作業は楽です。


加算されたスペースの量を調節する
 MuseScoreのデフォルトのスペーシングでは、臨時記号等が前の音符と重ならないように自動でスペースが付与されます。このようなスペースを拙ブログでは「加算されたスペース」と呼称しています。この「加算されたスペース」が加算されすぎている場面がMuseScoreでは多々あります。このような不要な「加算されたスペース」は「割振り」の数値を少なくすることで削ることができます。
 余分な「加算されたスペース」が多いのであれば、あらかじめ全ての音符の「割振り」をマイナスにし「加算されたスペース」を全て削ってから、スペースが必要な箇所のみ「割振り」の数値を元に戻すと良いでしょう。どこにスペースが必要でどこのスペースが不要かを自分で判断することで、浄書でのレイアウトの選択肢を増やし、より見やすい楽譜にしていくことが可能となります。

具体的な手順は以下の記事で説明しています。

 MuseScore 3では「割振り」の仕様が変更されており、一定以上マイナスにしていくと何故か音符間隔が広がってしまうという挙動を示します。スペースを減らすのに却ってスペースが増えてしまうのは本末転倒ですので、スペースが増加に転じない程度で機能を使うと良いでしょう。しかしながらこれらの仕様変更は、音符間隔の調整という観点ではMuseScore 2より自由度が遙かに劣ってしまっているのは事実です。このために私はMuseScore 2を使い続けています。

 ともかく、MuseScoreで楽譜をより綺麗にするためには、まず適切な記譜を適切な操作方法で入力することが大事です。適切な記譜で書くためには市販されている出版譜を参考にすると良いでしょう。MuseScoreの適切な操作方法を身につけるためには、公式のハンドブックを確認しましょう。その上で、フォントを変えてみたり設定を見直ししたりして、全体の見た目を変えてみると楽譜の雰囲気が変わります。読みやすい楽譜にするためには、自分で段割を考えることも大切です。1ページに何小節を入れるか、どの小節でページを変えるかというようなページ構成を決めてしまえば、残りはほとんどスペーシングです。スペーシングは突き詰めていけばゴールのない作業ですが、音符間隔が著しく異なる小節だけを「小節幅の伸縮」で調節するだけでも、かなり異なります。音符間隔を完璧にしたい場合は、既存の機能では果てしない作業になってしまうので、「一段一小節法」に手を出すのも良いでしょう。

MuseScoreで合唱譜を作成する手順

 合唱譜面には、他の譜面と異なる記譜・浄書の作法がいくつかあります。MuseScoreを使って合唱譜を作成する時には、デフォルトの設定ではそうした違いが反映されないため、不自然な版面になってしまいます。したがって合唱譜を作る場合には、まず合唱譜に適した設定をあらかじめ適用する必要...