MuseScore2浄書Hashiboso流 第十課

第十課 注意すべきMuseScoreの仕様

はみ出る線記号
 MuseScoreではデフォルトで、線記号が段を跨ぐ時に、右図のように跨ぐ前の小節線よりわずかに食み出てしまう不可解な仕様になっています。これはMuseScoreでの表示上だけではなく、印刷にもはっきり反映されます。従って、段を跨ぐ線記号は小節線に接する場合は、全て必ず左矢印一回分短くしましょう。




符尾の向きで変わる強弱記号の位置
 MuseScoreでは音符の符尾の上下で、強弱記号の水平位置が変化する仕様になっています。従ってフルスコア等で、同じ拍にそれぞれのパートにおいて符尾の上下が異なる音符があって、そこに強弱記号がつく譜例で、デフォルトでは右図のように強弱記号の水平位置が揃っていません。同じ拍の強弱記号の水平位置を揃えるためには、どちらかの符尾の向きにつく強弱記号を、約0.30spずらす必要があります。

複付点の設定
 MuseScoreのデフォルトの設定では、右図のように複付点音符において付点と付点の距離が近すぎて、ほぼ接触しているように見え不適切です。従って、「スタイルの編集」の「音符」にある「付点と付点の距離」を0.70sp程度に設定しましょう。

重なる付点
 和音の付点は、音の数と付点の数を一致させます。MuseScoreでも付点の音符の符頭の数と付点の数は一致しますが、一見付点が少なく見えることがあります。これは、右図のように付点が同じ位置に複数重なっているだけですので、付点を上下に移動させることで、符頭と付点の数が一致します。

加線の長さが勝手に削られる仕様
 小音符と通常の音符が拍を共有する場合と、譜表を跨いた譜例で窮屈なスペーシングを行う場合に、音符の加線の長さが設定より短くなってしまう場合があります。加線を偽造することで、対処することが可能です。
 また和音の一部の音を小音符にする場合も、加線の長さが下図のように削られてしまいます。こちらも加線を偽造することで対処することができます。


Gonvilleの拍子記号には「+」が搭載されていない
 MuseScoreではマスターパレットから任意の拍子記号を作成することができます。(1+3)/4といった、プラスを使った拍子記号も作成することが可能です。しかしMuseScoreに搭載されている記譜フォントのGonvilleでは、(1+3)/4のようなプラスを用いた拍子記号で、プラスが表示されず、13/4のように表示されてしまいます。特に記譜フォントに拘りがないのであれば、Bravuraを用いることをお勧めします。

MuseScoreの変なスペーシング仕様
 MuseScoreのスペーシングは浄書において全く使い物にならない仕様になっています。右図はMuseScoreのデフォルトのスペーシングですが、八分音符に注目すると、幅が揃うという次元ではありません。MuseScoreは小節内の音符の種類と密度によって、小節幅がそれぞれ決められ、小節毎に音符のスペーシングが決められている気がします。従って、小節が変われば同じ音符であっても間隔が変わってしまいます。

小節内の音符の種類でスペーシング比率が変わる
 MuseScoreは小節内の音符の種類によってスペーシング比率が変化するように思えます。右図のように、小節幅を調節して八分音符の間隔を揃えても、十六分音符や四分音符の間隔が揃っていません。このことから、八分音符に対する四分音符、十六分音符の間隔の比率が小節によって変化していることがわかります。MuseScoreは小節内の音符のバリエーションによって、スペーシング比率を小節毎に変化させています。しかし、Hashiboso流では、段の中で共通音価の音符の間隔は、臨時記号や他パート等の影響が無い限り、揃えます。架空の休符を挿入したり、コードの水平位置を弄ったりすることで、対応は可能ですが、MuseScoreのこの仕様は、Hashiboso流の浄書をする上で、大きな障害となっています。

ローカルレイアウト(音符の再配置)
 MuseScoreには「ローカルレイアウト」という、連桁内の音符の間隔を強制的に等しくする機能があります。これは右図のように、歌詞によるスペーシングによって、音符の間隔が歪になるのを、連桁の中の音符の間隔を強制的に等しくして補正する機能です。しかしこの機能は、他パートとリズムの縦を揃えることを放棄してしまうので、ほぼ使うことはありません。Hashiboso流ではリズムの縦は余程のことがない限り、揃えないことはありません。また、この機能は間隔を等しくするのが選択した連桁の中だけで、不十分です。音符の間隔というのは、ある音符から隣の音符までの間隔ですから、本来揃えるべき間隔は、連桁の中だけでなく、連桁の次の音符までの間隔を揃えるべきです。従って、この機能は殆ど使い物になりません。


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