2018年12月21日金曜日

MuseScore3の最大の欠点

 MuseScore3のβ版が既にリリースされています。MuseScore3はMuseScore2よりも様々な機能が足されていますが、MuseScore2の利点を消してしまっているものもあります。

 MuseScore3では左のような譜例をこのようなスペーシングで書くことが不可能になりました。つまり、同じ拍に異なる音価の連符があるときに、その両方が等しい間隔に並べることです。これが難しくなりました。

 MuseScoreはもとからこれを実現する機能はありません。ローカルレイアウトを使う人もいますが、この場合ローカルレイアウトを使っても、上図のように適切なスペーシングにはなりません。
 私は、上図の左端のスペーシングを実現するために、左図のように非表示の休符を入れてスペーシングを矯正していました。これは現状MuseScore2でこのスペーシングを実現するのに、一番綺麗で最も簡単な方式です。しかしMuseScore3ではこの方法は使うことができません。何故なら、MuseScore3はMuseScore2にあったある特性が失われているからです。

 MuseScore2はこのように、音符の間隔をインスペクタの「割振り」にある「後の間隔」をマイナス値にすれば、ほぼ際限なく音符の間隔を詰めることが出来ます。
 しかしMuseScore3ではいくつかの仕様の変更により、音符の間隔を狭められる限度が出来てしまいました。この変更により、MuseScore2では非表示の休符を入れたとしても、間隔を無限に狭められるために、多くの小節を一段に入れることが出来ます。このテクニックを使ってもレイアウトの自由度が損なわれることはありませんでした。しかしMuseScore3では非表示の休符を入れると、その非表示の休符の間隔を一定以上詰めることが出来ません。そのためこのテクニックを使うと一段にあまり多くの小節を入れることが出来ません。
 私はMuseScore2は詰まったレイアウトになるほど性能が発揮されるソフトだと思います。音符の間隔が無限に詰められる事によって、一段に入れる小節数の上限が必要以上に高いのです。そのため限界まで詰まった楽譜を作る時に最大の性能が発揮されました。
 しかしMuseScore3はその利点を、音符の間隔の必要以上に詰められなくしてしまうことによって、消してしまっています。これはMuseScore2にあった高いレイアウトの自由度が無くなってしまいます。この点においてMuseScore3は劣っていると言えます。

 MuseScore2には高い自由度があり、それによってMuseScoreが持つ数々の不適切なスペーシングの仕様を矯正することが可能でした。しかしそれがMuseScore3には無くなっているので、MuseScore3ではMuseScoreの不適切なスペーシングを直しきれないのです。少なくとも現状ではここに上げた譜例を完璧に仕上げることはMuseScore3では難しくなりました。
 
 私にとって、MuseScore3は浄書出来ない譜例が多くなってしまいました。それらはMuseScore2では浄書が出来たものなのです。

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