果たしてMuseScore3のリピート線の仕様変更は妥当でしょうか。
どうやらMuseScore3でリピート線の仕様は、Elaine Gould著『Behind Bars』のp.234に書かれているスタイルに拠っているようです(https://musescore.org/en/node/280802#comment-881805)。
MuseScore3の仕様は正しいようですが、果たしてMuseScore2の仕様は間違っていたのでしょうか。私は実のところMuseScore3でのリピート線はかなり違和感を覚えますし、MuseScore2の仕様の方が普通だと思っています。
そこである楽譜を各出版社別に比較して、どのようにリピート線が置かれているかを、実例を見ることにしました。IMSLPのベートーヴェンのピアノソナタ32番、Op.111のページにある、各出版社と手持ちの楽譜より譜例を抜粋しました。
1. Edward Schuberth & Co.社、1891年版、p.144より(J.G. Cotta社のリプリント)
2. Dover Publications社、1975年版、p.605(Universal Edition社1918年版のリプリント)
3. Edizione Ricordi社、1920年版、p.205より
4. C.F. Peters社、1920年版、p.607より
5. G. Henle Verlag社、1967年版、p.319より
6. 音楽之友社ウィーン原典版、2002年版、p.186より
この中ではMuseScore3と同じリピート線のスタイルであるのは3番目のEdizione Ricordi社の楽譜だけでした。これらの譜例だけを見ると、MuseScore2のスタイルの方が一般的だと推察されます。もちろんMuseScore3のスタイルも実際の出版された楽譜に存在するとも言えますが、同時にMuseScore2のスタイルが間違っているとは言えないでしょう。むしろ多数派はMuseScore2のスタイルです。
どちらが正しいかは大事ではありません。MuseScore3は現実に数多く使われてきたスタイルから決別し、むしろ少数派であろうスタイルに敢えて変更してしまったのです。これは全く良い変更ではありません。
もしMuseScore3が、MuseScore2の従来のスタイルに加えて、新たなスタイルとしてElaine Gould氏の主張するスタイルを、リピート線に追加したのであったならば、両方のスタイルをユーザーが選ぶことが出来る仕様であったならば、それは素晴らしいものになったのでしょう。しかし現実は従来のリピート線のスタイルをMuseScore3は消してしまったのです。
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