MuseScore2浄書Hashiboso流 第四課

第四課 記号の位置

速度標語
 メトロノーム記号や速度標語は、基本的に水平位置は拍子記号の左端に合わせます。拍子記号の無い場合では、速度記号の効果が開始する拍の左端に揃えます。MuseScoreではデフォルトの設置位置で、正しい水平位置に配置されるので、弄る必要はありません。
 メトロノーム記号や速度標語は、スコア全体または、ある程度まとまったセクション全体に掛かるので、垂直位置は、個別のパートに掛かるespr.やcantabileなどの発想記号や歌曲における強弱記号よりも上側のラインに配置します。速度記号を配置する時に、五線に近づけられる限度は、速度標語が一つ入るだけのスペースになります。これはおおよそ五線の間2つ分です。速度標語はスコア全体に掛かる記号なので、五線に近すぎることはあまりよろしくありません。

譜表テキスト
 譜表テキストの配置位置は、各パートの上側で、効果が開始する拍の左側に揃えます。テキストのベースラインは五線より1間は離すようにしましょう。

強弱記号
 強弱記号は各パートの下側で、効果が開始する拍の左側に揃えます。歌曲の場合は上側に配置します。上側に配置する場合も下側に配置する場合も、五線より1間は空けておきます。
 mfやpp等の強弱記号は、効果が開始する地点よりもやや左側に置かれることが良くあります。これにより音符を見る前に強弱記号が目に入るので、演奏する瞬間より前に強弱を意識しやすくなります。但し、cresc.やdim.といった記号は効果範囲より左側に置くことはほぼありません。
 スコアで強弱記号の縦を揃える時にMuseScoreには気をつけるべきところがあります。MuseScoreの仕様では、符尾の上下によって強弱記号の水平位置が約0.3sp異なった位置におかれます。従って同じ拍で強弱記号の水平位置をそれぞれ0にしても、符尾の上下が異なっている場合には水平位置は揃っていません。片方の符尾の向きを基準にして、もう片方の向きの音符に付く強弱記号を0.3spずらす必要があります。

松葉

 クレッシェンド/デクレッシェンドである</>の松葉も配置位置は強弱記号と同じです。効果が開始する拍の左側に揃えます。段末から次の段に渡る松葉は、Hashiboso流では小節線にぴったり合わせます(小節線より若干の余白を持たせる流儀もあります)。また、前の段から繋がっている松葉は、音部記号のエリアに重ならない位置から置き始めます。MuseScoreではデフォルトで、へ音記号の2つの点の部分に重なるように前の段からの線記号が配置されるので、ここは一つ一つ調整する必要があります。右矢印5回分すなわち0.5sp開始点をずらすのが良いでしょう。(余談ですが、前から続く松葉やスラーなどの線記号が、どの位置から書かれるかは、人それぞれです。必ずしも決まったところから揃えて書かれているわけでもないようです。)
 さてMuseScoreでは段末に小節で、段末から次の段に渡る線記号が、一見段末の小節線にぴったり合って配置されるように見えますが、実際には0.1sp分右にはみ出て配置されます。これは印刷した時にもしっかりはみ出ていますので、全て個別に修正する必要があります。左矢印一回分すなわち0.1sp分線記号を短くしましょう。


連符の括弧と数字
 連符の括弧をどの位置におくかは、いくつかの流儀があります。符尾に括弧を揃える流儀や符頭の外側に揃える流儀、符頭の真ん中に揃えるものもあります。Hashiboso流では符尾の上下に依らず符頭の外側に揃える流儀を採ります。符頭の外側に揃える場合、同じリズムであれば各パートで符尾の上下が異なっていても、連符の括弧や数字の水平位置が全て揃うという利点があります。
 連符の数字を置くときに、一つ気にするべき点があります。全ての文字に言えることですが、文字の横線またはそれに近い部位または点を、五線と被らせてしまうと文字の視認性が悪くなります。Hashiboso流では3の場合は右図の◎の位置に置きます。MuseScoreはデフォルトでは五線内に数字を配置しないようになっていますが、視認性に配慮して配置すれば何の問題もありません。連符の括弧や数字は往々にして省略されることもあるので、わざわざ五線の外に置くほど大事な記号ではないと考えます。MuseScoreで五線内に連符の数字を配置されるようにするには、「スタイルの編集」→「連符」のところの「音符からの垂直距離」にある「譜表を避ける」のチェックボックスをオフにしましょう。

歌詞がつく場合
 歌詞がつく歌曲の場合、五線の下に歌詞がつくために、本来五線の下に配置する記号が往々にして五線の上に配置されます。歌詞がつく場合は強弱記号は常に五線の上に配置されます。五線の上に配置する場合は、強弱記号は譜表テキストと同じように五線よりベースラインの間を少なくとも1間空けます。
 歌詞がつく場合は強弱記号が五線の上側に配置されますので、五線の下に配置するものが歌詞以外の記号ではかなり少なくなります。またアクセントやスラー等は歌詞があっても五線の下側に配置することが可能ですが、五線の下側のスペースが歌詞によって多くを占められるので、譜面のバランス上やむなく上側に配置することもあります(図のアルトのテヌートは本来は下側)
 歌詞がつく場合は特に、一つの譜表につく記号や歌詞などの要素が多くなります。どのような譜面であっても、演奏者が見なければいけない範囲はコンパクトである方が良いので、縦に広がりやすい歌曲は特に演奏者の目線に配慮しなければなりません。

オッターヴァ
 オッターヴァも基本的には効果が開始する拍の左側に始点を合わせます。効果範囲が明らかであれば拍より若干左側にあっても問題ありません。臨時記号やアルペジオ等の記号が音符に付随している場合は、それらを含めて左端にオッターヴァの始点を合わせます。但し臨時記号やアルペジオに合わせることで開始点が曖昧になってしまう場合は、それらを無視して音符の左端に合わせる方が良い場面もあります。
 オッターヴァの終点は効果が終了する拍よりも後ろ、効果が無くなった拍よりも前に配置します。オッターヴァの終点は、効果が終わる音符の直後に配置するか、音価分伸ばして配置するかの2つの配置の方法があると思いますが、Hashiboso流ではどちらでも良いと考えます。
 前の段より続くオッターヴァも基本的には拍の左端もしくはそれに付随する記号の左端に揃えます。もしくは、タイやスラー同じように、拍より左側に配置することもあります。前から続くオッターヴァであることを示すために、オッターヴァに丸括弧を用いて(8)または(8va)のように表記することもありますが、Hashiboso流ではそれは不必要だと考えているために、括弧を用いることはありません。(スラーやクレッシェンドは効果範囲を示すことに意味がありますが、オッターヴァは個々の音の高さを定めることに意味があり、オッターヴァの範囲の中のある一点を見たときに、開始点を意識する必要はないので、前から続くオッターヴァに括弧を付ける必要はないと考えます。)


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