MuseScore2浄書Hashiboso流 第六課

第六課 符尾と連桁

符尾の長さ
 音符の符尾の長さは通常、楽譜の1オクターブ分の長さ、五線の間3.5個分の長さになっています。五線から離れる方向の符尾は通常の場合より若干短くします。MuseScoreでもデフォルトでそのような設定になっていますが、符尾の短くする加減が若干短くなりすぎます。Hashiboso流では五線から離れる方向の符尾は、短くしても3間分の長さを保ちます。Hashiboso流での符尾を短くする程度はおおよそ右図の通りですが、必ずしも図の範囲通りに長さが切り替わるわけではなく、前後の音型によって著者は適当に変えています。記号の混み具合や段の距離があまりない場合には、これより短くなることもあり得ます。
 音符の旗が2枚までの、16分音符までの音符の符尾の長さは、上記の符尾の長さになりますが、旗が3枚以上になると、それに応じて符尾の長さを伸ばします。MuseScoreでも左図のように伸びるので、あまり調整する必要はありません。
 五線の中側に向かう符尾は、どんなに音が五線より離れていても、五線の第三線まで符尾を伸ばします。


符尾の短縮設定
 MuseScoreでの符尾の長さの設定は「スタイルの編集」の「音符」のところで行います。Hashiboso流では「符尾の短縮」の「進行」を0.15sp、「最短符幹」を3.00spにしています。おおよそこの設定で、大抵の単音符の符尾の長さは調整する必要がなくなりますが、和音のときの符尾の長さには注意しなくてはなりません。MuseScoreでは符幹の長さが和音の場合、和音の外側からカウントされるようです。従って、右図のように本来は最初の2つの四分音符は赤線で符尾を揃えるべきですが、和音のために短くなってしまっています。こういった箇所は手動で直すしかありません。(MuseScoreの符幹の長さの数値がインスペクタに表示されないので、個々に調整した時に調整幅がわからなくなるところが嫌ですね。)

小音符の符尾
 小音符の符尾の長さは、通常の音符より短くします。基本的には2.5間分の長さにします。五線より外向きに配置される場合は、最大で2間まで符尾を短くします。五線の中に向かう符尾は、どんなに音程が離れていても五線の第2線もしくは、第4線まで延ばします。


連桁の位置
 連桁の位置は基本的には符尾の長さに準じます。ヨーロッパの流儀では3.5間よりも短くなることがありますが、日本の流儀では五線から離れる場合を除けば基本的に3.5間以上の長さを維持します。MuseScoreの連桁はヨーロッパの流儀に近い配置になっていますが、特定の音型で連桁の傾きが音型の傾きより急になったり、ヨーロッパ流の符尾の短い傾向がある一方で、特定の音型で符尾が通常より長くなったりすることがあります。Hashiboso流は日本の浄書流儀に近いものを採用するので、基本的に3.5間の符尾の長さを維持します。

連桁の傾き
 連桁の傾き方は基本的に音型の傾きと同じか、それよりも緩めの傾きにします。Hashiboso流では、基本的に次のような自己流の傾け方を採用しています。基本的には連桁で結ばれている音程の最初と最後の音高差によって、傾きを決めます。
 連桁の最初と最後の2音が2度から3度の関係であれば、1間分の傾きにします。4度から6度であれば、1.5間の傾きにします。7度以上の音程差であれば、2間の傾きにします。基本的にはこの3種類の傾き方です。なお和音を含む連桁は、和音の中の最も符尾側の音を基準にして連桁の位置を考えます。この傾き度合いの区分けはあまり厳密に守られる必要はなく、音型や気分によって区分けの境界は若干前後します。
 三音以上の連桁では、連桁の両端の音が上行下行の関係であっても、連桁を五線と平行とする場合があります。一つは、連桁全体の音型が上行でも下行でもない場合は連桁を平行にします。また音型が連桁の中でループするような場合も連桁を平行にします。二つ目は、両端の音に従って連桁の位置を決めた時に真ん中の音の符幹が基準よりも短くなる場合に連桁を平行にします。例えば左図の最初の小節一拍目の、下声部の三連符の場合は、両端の音を基準にすると、真ん中の音の符幹の長さを保つことが出来ません。こういった場合は連桁を平行にします。しかし符幹の短くなる程度が少ない場合は、上図一小節目三・四拍目の八分音符のように傾けても良いです。

16分音符以上の連桁の位置
 16分音符以上の連桁の場合は、基本的には上記の八分音符の場合の傾き方を適用しますが、その場合、右図上の赤く塗りつぶした所のように、連桁と五線との間の若干の隙間が生じます。Hashiboso流ではこの隙間を生じないように、隙間がある側の符尾を若干短くします。
 右図下のように64分音符の場合、通常の連桁の間隔では、連桁と五線の隙間を埋めるために符尾を下げても、反対側に隙間が出来ます。この場合は連桁の間隔を調整することで隙間を埋めることができます。デフォルトでは64分音符が該当しますが、設定している連桁の幅や間隔によっては、間隔を調整すべき連桁の本数が変わってきます。なおMuseScoreでは64分音符は自動的に連桁の間隔が広がるようになっているので、間隔は調整する必要はありません。手動で連桁の間隔を調整するには、譜面上の調整したい連桁を選択し、インスペクタの「連桁」の「左増分」及び「右増分」の数値を増減することで調整することができます。

付点と符尾
 付点8分音符や付点16分音符などの音符は、付点と旗が干渉することがあります。この場合符尾を伸ばして干渉を回避する流儀と、付点を右にずらして干渉を回避する流儀があります。日本では付点を右にずらすのが主流です。Hashiboso流では右にずらす方を採用します。

トレモロ
 トレモロの太い線の位置は基本的に右図上のように通常の音符の連桁の位置と同じように設置します。全音符のトレモロ以外の、符尾のある連桁は、それぞれの符幹から等距離にトレモロを置きます。
 全音符のトレモロは、MuseScoreのデフォルトでは右図下のように二音程間の中心にトレモロが設置されない場合があります。これはMuseScoreが全音符に符尾があるようにトレモロの位置を考えているためです。全音符の二音程間のトレモロでは、トレモロの水平位置は二つの音程の符頭から等距離に置きます。全音符のトレモロの垂直位置は、符頭と符頭をトレモロの線で繋ぐように置くか、架空の符尾を立てて考えた連桁の位置に合わせて置く二通りの考え方があります。後者の方式では、声部の分かれた譜例でのトレモロで、どの音からどの音へトレモロが繋がっているかが不明瞭になってしまうデメリットがありますので、前者の方式の方が使いやすいと思います。


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